グリーンウォッシュはなぜ起きるのか
企業における透明性というと、情報開示や投資家向けの報告書を思い浮かべる人が多い。しかし透明性の問題は、外向きより先に、内側で起きている。
社内で「悪いニュースが上に届くかどうか」。それ自体が、透明性の本質だ。そしてグリーンウォッシュとして裁判や行政処分で決着がついた事例を見ると、ほぼ例外なく、この内側の透明性が先に崩れている。
VWのディーゼルゲートは2015年に発覚した。米国の排ガス基準を満たすと謳っていた1100万台の車両に、検査時だけ基準を満たすよう偽装するソフトウェアが搭載されていた。後に明らかになったのは、エンジニアたちが2005年の時点で、技術的な解決策を時間と予算内に見つけられなかったという事実だ。問題は、そこからだ。技術的な困難が共有された後も、不正な対応は継続された。
内部文書が示したのは、強気な目標を称え、悪いニュースを罰する文化だった。「できない」と言うことが、失敗と同義だった。加えて、ディーゼルエンジンの技術力はVWのアイデンティティそのものだった。失敗を認めることは、企業の誇りを傷つけることを意味した。外向きの嘘は、内側の沈黙から生まれていた。
DWSの事例は、業種は違うが構造が似ている。ドイツ銀行の資産運用部門であるDWSは、「ESGはDNAに刻まれている」とマーケティングしながら、実際の投資プロセスはその基準に従っていなかった。元サステナビリティ責任者のDesirée Fixlerが2020年の年次報告書における誇張を内部で指摘した。彼女はその後、解雇された。
内部告発はウォール・ストリート・ジャーナルへの情報提供という形で外部に出て、SECとドイツ検察の両方が動いた。2023年の和解金はSECへの1900万ドルとドイツ検察への2500万ユーロ。CEOは辞任し、フランクフルトの本社は警察の捜索を受けた。問題を指摘した人が排除され、問題を隠した組織が罰せられた。順番としては、その通りだ。
二つの事例に共通するのは、悪意というより、構造的な必然だ。外部からのプレッシャーが組織の現実的な対応力を超えたとき、内部に「悪いニュースを報告しない」文化があると、組織は嘘に向かって動き始める。
グリーンウォッシュを防ぐのは、善意ではない。「悪いニュースを言える組織」と、「言える人を守る構造」だ。それはサステナビリティの問題である前に、経営の問題である。
参照
- Kellogg School of Management, "What Volkswagen's Emissions Scandal Can Teach Us about Why Companies Cheat": https://insight.kellogg.northwestern.edu/article/what-volkswagens-emissions-scandal-can-teach-us-about-why-companies-cheat/amp
- ESG Today, "SEC Fines Deutsche Bank Subsidiary DWS $19 Million Following Greenwashing Investigation": https://www.esgtoday.com/sec-fines-deutsche-bank-subsidiary-dws-19-million-following-greenwashing-investigation/
- GRC Report, "DWS Group Settles Greenwashing Investigation with €25 Million Fine": https://www.grcreport.com/post/dws-group-settles-greenwashing-investigation-with-eu25-million-fine