ブランドは「見せ方」ではなく、企業の意思決定である【後編】

前編で、ブランドとは「企業が積み重ねてきた意思決定」だと書いた。では、その見えない資産は、どうやって推し量ることができるのだろうか。

ブランドは財務諸表に載らない。正確には、M&Aが起きたときに初めて「のれん」という形で数字に現れるが、それは資産として管理しているのではなく、買収価格と純資産の差額を処理しているだけだ。上場企業であれば株価にある程度反映されるが、未上場企業にはその手がかりすらない。

だからといって、推し量る方法がないわけではない。未上場企業の株価も、簡便な方法で近似できるように、ブランド資産も「いくつかの問いを立てること」で輪郭を見ることができる。

一つ目は、価格だ。需要と供給が均衡したところに市場価格は決まる。コモディティであれば、その価格で売るしかない。しかし同じカテゴリの中で、スペックや原材料だけでは説明できない価格差が存在する企業がある。その差分が、ブランドが生み出している付加価値だ。「値引きしなくても選ばれているか」という問いに置き換えてもいい。

二つ目は、市場での存在感だ。市場に10社あれば、自然なシェアは10%だ。自社が25%を取っているなら、15%分は「選ばれやすさ」によって生まれた超過シェアだ。競合と同じコストをかけているのに、より多く選ばれているとしたら、その差はブランドの引力以外では説明しにくい。

三つ目は、採用だ。優秀な人材が集まるかどうかは、ブランド資産の一形態だ。給与水準が同じ競合他社と比べて、より優秀な人材を低いコストで採用できているとしたら、それはブランドが機能している証拠でもある。「なぜここで働くのか」という問いに、給料以外の答えが返ってくる企業は、ブランドを資産として持っている。

この三つは、価格・量・人という異なる軸で、同じものを見ようとしている。いずれも、計算式で確実に出せる数字ではない。しかし問いを立てることで、自社のブランド資産の輪郭はある程度見えてくる。

最後に、一つ逆説的なことを言う。ブランドがなければ、危機と呼べるものはほぼない。企業が批判され、信頼を問われる瞬間は、そもそも期待されているから生まれる。批判される価値があるから、批判される。危機の深刻さは、蓄積されたブランド資産の大きさに比例する。

ブランドは、作るものではなく、積み重ねるものだ。そしてその積み重ねは、いくつかの問いを通じて、推し量ることができる。

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